アセトミノフェン、イブプロフェン、アスピリンなど、市販薬として売られている抗炎症剤は、ほとんどのご家庭で常備薬としておかれていると思います。痛みや熱などは本当に不快で厄介なものですが、これらの炎症は一体なぜ起きるのでしょうか?
実は炎症は、体に備わっている免疫機能が、病原体や異物が体内に侵入した時、または体が何らかの損傷を負った時に、体を守り、そして修復するために敢えて起こしている物なのです。例えば、転んで膝に擦り傷を作ってしまったとしましょう。肌に傷があると、そこからばい菌や異物が体の中に入ってしまう可能性があるので、傷を負った細胞がまず炎症を促進する物質を出します。すると、血管が広がって、免疫細胞や、抗体や、血を固める血小板などを血液と共にそこに集めます。また、免疫細胞は熱が高い方が活発になり、細菌も熱が苦手なので、その怪我の部分の温度を上げます。こういったことが起きるせいで、擦り傷の部分は赤くなり、熱をもつわけですが、そのおかげで感染を予防し、修復を促進することができるのです。怪我をした時だけではなく、ウイルスが体内に侵入して風邪をひいて、体全体の体温が上がるのも、免疫機能があえて起こす炎症の結果です。炎症は、体のどこかで起きている何らかの緊急事態を克服し、体を修復し再生するための正しい反応であり、決して誤作動ではありません。
炎症は基本的には体にとって益になる物なわけですが、慢性的になると色々と問題が出てきます。慢性的な痛みや、心の問題、慢性疲労、免疫力の低下などは、慢性炎症が起きていることの典型的なサインです。慢性炎症は、急性の炎症のように痛みや熱などを必ずしも伴わないので、一般の検査では見逃されていることが多く、大体の場合は薬で表面的な症状をもみ消すだけで、問題の根本原因はそのまま放置されます。
慢性炎症の背景によくあるのが、慢性的なストレスです。ここでいうストレスとは、精神的ストレスだけのことではなく、体にとって負担になる物全てを指します。その慢性的なストレスが、精神的なものであれ、肉体的なものであれ、又は農薬や化学調味料などのケミカル的なものであれ、種類に関係なく、体は同じ対応方法でその危機を乗り越えようとします。具体的に何が起きるかというと、「コルチゾール」というホルモンが分泌されることで、栄養素やエネルギーはみんな心臓や筋肉に集められ、早く走ったり戦ったりすることを可能にします。それと同時に、その瞬間をサバイバルするために必要のない消化や免疫などの機能は抑制されるのですが、その時に炎症も抑制されます。
炎症が抑制されるなら都合がいいのではないか、と思うかもしれません。しかし、よく考えてみてください。炎症はそもそも何かを修復するために体が起こすものでした。ストレスが一時的な物であれば問題は無いですが、ストレスが長期的に続いたらどうなるでしょうか。修復を無理矢理中断させられている箇所が体中で増えていってしまい、そのうち悲鳴を上げ始めます。すると今度は体のありとあらゆる所で、なんとか治してください、と炎症を起こす物質が出されるようになり、体中で炎症が慢性的に起きるようになってしまいます。これが、本来抗炎症作用があるコルチゾールが長期に渡って分泌され続けると、結果的に慢性炎症に繋がる、という現象のメカニズムです。
一般的には、何らかの炎症がある時は、その不快な症状をもみ消すために抗炎症剤(鎮痛剤、解熱剤、ステロイドなど)を使用することが多いですが、それらを繰り返し使用することは、かえって炎症を慢性化させてしまうことが少なくないのです。薬でだましだまし症状を誤魔化して問題を放置していると、いつかそのツケが回ってきます。
ひとつ忘れてはならないことは、コルチゾールはストレス対応のホルモンであると同時に、血糖値をコントロールするメカニズムのひとつでもあるということです。甘い物や糖質中心の食事は、血糖値を慢性的に大きくぶらつかせ、その度にコルチゾールの大量分泌を必要とします。
では、何が真の解決策なのでしょうか。それは、そもそも体にストレスになっているものを取り除くことです。多くの場合、そのストレスはひとつではありません。人間関係、住んでいる環境、運動不足、栄養不足など、いくつものストレスが重なっていることがほとんどです。その中で、一番コントロールが可能なのが、食べ物です。甘い物、乳製品、小麦製品、タンパク質不足、脂質不足、化学調味料や農薬などのケミカルなどは、アレルギーの有無に関係なく体に大きな負担をかけます。まずは食べ方を正すことで、消化や解毒の臓器への負担を減らすことができ、体の許容量が大きくなり、無駄な炎症がおさまってきます。抗炎症剤を使って症状を無理矢理抑えることは、単に「臭いものに蓋」をしているだけであって、根本的な解決法にはなりません。全てのストレスを取り除くことは無理でも、健康の五大要素DREAM(Diet食事、Rest休養、Exercise運動、Alignment姿勢、Mental Health心の健康)を見直して、まずは正せる部分から正して体へのストレスを取り除くことで、体の修復を促し、炎症を起こす必要性を減らすことができるのです。
まずは自分の生活を見直し、何か体にとってストレスになっているのかを考えてみましょう。とはいっても、何が体にとってストレスになっているかを見つけるにはある程度の知識が必要です。機能性医学のドクターは、問題の根本原因(ストレス)を見つける専門家です。ぜひ一度ご相談ください。
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