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Issue No. 33 (April 17, 2025) MSG

今年の1月にアメリカで赤色3号という合成着色料の使用が禁止になりました。アメリカでは食品での着色料の使用がものすごく、子供が食べるお菓子や飲み物がまるで絵の具を入れたかのようにカラフルで、日本から来たばかりの人は皆さん揃って驚かれます。着色料に関しては日本よりもアメリカの方が規制が緩いようですが、食品添加物全般に関して言うとそうではなく、実は日本の方がたくさんの食品添加物を食べ物に使用しています。許可されている食品添加物の一覧を比べると、アメリカの方が数は多いのですが、それは定義や分類の仕方の違いによるもので、実際は食品添加物は日本よりもアメリカでの方が厳しく規制されているようです。


日本を代表とするアジアの国でよく使われる食品添加物といえば、MSG(うまみ調味料、Monosodium Glutamate、グルタミン酸ナトリウム、〇の素)でしょう。食品表示には「アミノ酸等」と書かれていることが多く、日本の調味料、スナック菓子、加工食品には必ずと言ってよいほど入っています。グルタミン酸は「うまみ成分」とも呼ばれ、チーズや醬油や昆布などにも自然に含まれているものなので体に害はない、との主張もよく聞かれますが、天然のグルタミン酸と、化学合成物質であるグルタミン酸ナトリウムとでは、構造が少し異なるため、体に与える影響も違ってきます。


MSGの害としてまず知られているのが、脳や神経に及ぼす影響です。グルタミン酸は興奮性の神経伝達物質であり、神経細胞同士のやり取りに使われ、学習や記憶に重要な役割を果たします。天然のグルタミン酸の大半はタンパク質の一部として体に入り、消化分解されて吸収され脳に達するまでにある程度時間がかかるので、通常は問題はありませんが、MSGは全てが単体として存在するため、一気に脳に到達して神経興奮毒となり、ネズミの実験では行動に異常が出ることが確認されています。頭痛、鬱、精神障害、多動、しびれ、筋肉痛、疲労感、めまい、動機、胸痛、吐き気、胃腸の不調などの症状を起こすことがあり、更には痴呆、アルツハイマー、パーキンソン病、ALS、多発性硬化症との関連を示唆する報告もあります。


また、MSGの摂取は脳の視床下部という部分に損傷を作り、食欲をコントロールするレプチンというホルモンの働きを阻害し、インスリン抵抗性、II型糖尿病、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、脂肪肝などに繋がっていきます。その他にも、体内での慢性炎症の原因となり、酸化ストレスを増やし、性ホルモン異常による思春期早発や不妊、癌との関係も疑われています。MSGの摂取が喘息の発作の引き金となることを示す文献もあります。成人よりも赤ちゃんや子供の方が害を受けやすいこともわかっています。ここまで書いたらもう充分お分かりいただけたと思いますが、とにかくMSGは体に良くないのです。


MSGの危険性を訴える文献はたくさんあるにも関わらず、日本の政府は「普段の食事から入る量程度であれば害はない」としています。ネットで検索すると、「〇の素が危険だというのは誤解である」、「安全性が確認されている」などという記事ばかりが最初に出てきます。しかし、現状を見てみましょう。日本はアメリカと比べると太っている人は少ないのに、どういうわけかII型糖尿病になる人が異常なほどに多いのです。高齢者の痴呆やアルツハイマーの問題も深刻です。不妊の女性も年々増えており、日本では以前から癌が死因のトップです。また、添加物の安全性を検証するリサーチは、一つの添加物に関してのものがほとんどで、他の添加物と合わせて摂った場合に関しては研究されていません。MSGが入っている食品には、100%と言っても過言でないほど、必ず他の添加物も入っています。


では、どうしたら良いのでしょうか。まずは極力摂らないに越したことはありません。アメリカでは、普通のスーパーで売られている調味料、加工食品、お菓子、ファーストフード、チェーンのレストランの食べ物などは、日本と同じようにMSGを使っているものが多く、Natural Flavor、Seasoningsなどと、一見無害に見える名前で表記されている物が実はMSGだったりしますが、そういったものが全く使われていない物も探せばあるので、意識して気を付ければ食品添加物の摂取をかなり抑えることが可能です。しかし日本の食べ物は本当に、本当に(!)食品添加物まみれで、それを避けることは非常に困難になっています。やはり、家でシンプルに調理することを基本にしなければなりません。


家で調理する場合は、良質の塩、コショウ、酢、大豆と小麦と麹と塩だけで作られた醤油、大豆と麹と塩だけで作られた味噌などだけで、大半の物は十分美味しく味付けすることができます。塩麴や醤油麹、良質の材料を使い伝統的な方法で作られたワインや日本酒などを使うのもよいでしょう。お味噌汁やスープやカレーは、干し椎茸、昆布、いりこなどでとったダシや、動物の骨と野菜くずを使ってとったブロスを使えば、ほんだしや鶏がらスープの素に負けないくらい美味しく仕上げることができます。100歩譲ってMSGは無害だったとしても、MSGに他の栄養素は全く入っていません。だし汁や骨スープには、コラーゲン、グルコサミン、ミネラル、アミノ酸各種に加え、天然のうまみ成分であるグルタミン酸もたくさん含まれています。きちんと本来のやり方で作れば、美味しいと感じるものができるようになっているのです。うまみがあるところには栄養がある、とも言えるかもしれません。味は似ていても、MSGと本物の美味しさとでは、中身が全く違ってきます。


MSGに対する許容量は一人一人異なりますし、その時の栄養状態によっても違ってきます。ビタミンA/C/D/E、マグネシウム、マンガンなどの栄養素が満たされていると、少々摂ってもさほど害を受けずに済むそうです。また、オーガニックではない穀物、豆、ナッツ、トウモロコシ、大豆、サトウキビ、その他遺伝子組み換え作物に大量に使われるグリホサートは、神経のシナプスでのグルタミン酸の分解を妨げて神経毒性を上げるので、MSGによる害を最低限に抑えるためには、グリホサートの摂取を普段からできるだけ避けることも大切です。普段良い食生活を心がけていれば、時々外食などで羽目を外しても、毒になるものを体がある程度は処理することができるのです。ただ自閉症を持つ子供は、どういうわけか脳にグルタミン酸をためやすく(代謝できない?)、MSGを摂るとすぐに脳が興奮状態になりてんかんを起こしやすくなるので、特に気を付けなければなりません。自閉症とは関係のないてんかんがあるお子さんも、MSGは極力避けることをお勧めします。


和泉家では味付けは良質の天然海塩、オーガニックコショウ、オーガニックたまり醤油がメインです。カレールーはMSGが入っているので使わず、カレー粉は全てオーガニックのスパイスで調合し、塩と醤油と、オーガニックの赤ワインと、自家製骨スープを使って作ります。たこ焼きソース、お好み焼きソースも家で作ります。家で調理したものはほぼ100%化学調味料フリーですが、時々外食して、恐らくMSGや他の添加物がどっさり入っているであろうものを食べると、食後にやたらと喉が渇いたり、翌朝瞼が腫れていたりすることもあります。MSGに舌が慣れてしまっている人が突然摂らなくなると、最初はMSG無しの味付けを物足りなく感じるかもしれませんが、段々と味覚が研ぎ澄まされてきて、天然の味を美味しいと感じられるようになりますよ。ぜひ挑戦してみてください。



 
 
 

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